「複数施設における悪性腫瘍未婚女性患者における卵子採取、ならびに凍結保存の臨床研究」終了のお知らせ
※悪性腫瘍未婚女性患者における卵子保存を2007年より行って参りました本臨床研究は2015年3月をもちまして終了いたしました。今後は卵子保存を行った患者様の追跡調査を行い、結果は学術集会にて年次報告をいたします。


「複数施設における悪性腫瘍未婚女性患者における卵子採取、
ならびに凍結保存の臨床研究」の概要 (2007年2月~2015年3月)

研究の背景と目的

 抗がん治療を受けられた女性患者様は、抗がん剤や放射線照射の副作用により、卵巣機能が静止して閉経状態になることが報告されています。 閉経状態から回復するか、そのまま閉経となるかは、治療の種類と治療開始時の年齢などの様々な要因が関与するので一概にはいえません。 しかしながら、閉経になれば卵子は作られず妊娠できなくなります。
 近年、がん治療の副作用により閉経の可能性がある患者様に対して卵子や受精卵の保存、ならびに卵巣を保護することによって卵巣機能を温存する方法等が行われています。 その中でも、卵子の凍結保存技術は、生殖補助医療の発展に伴い急速な進歩を遂げ、既に多くの患者様に実施されています。 治療前に卵子を凍結保存すれば、治療後に閉経になっても妊娠する可能性を残すことができます。
 A-PARTでは、白血病、及びこれに準ずる血液疾患に罹患した未婚女性患者の妊孕能を温存するために、これらの疾患患者様からの卵子採取、 ならびに凍結保存の臨床応用技術の確立を目的として2007年より臨床研究を行っています。

対象となる患者条件

1)原疾患が白血病及びこれに準じる血液疾患であること。
2)年齢が15歳以上であること。
3)未婚女性であること。
4)原疾患の主治医が、下記の項目①、②の判断を文書にて示していること。

  • ①当該患者が卵子凍結保存以外の医療行為では、悪性腫瘍治療後に妊娠成立の見込みが極めて低いこと。
  • ②当該患者の全身状態や予後を総合的に判断し、患者が卵巣刺激・採卵に耐えうること。
5)患者本人、もしくは患者が未成年者の場合親権者または後見人に対して研究参加施設担当者より説明書を用いた研究内容の 十分な説明及び卵巣刺激法に関する十分な説明がなされていること。
6)患者本人が卵子凍結保存を希望し、臨床研究参加への同意を文書にて示していること。患者が未成年者の場合、 親権者もしくは後見人も臨床研究参加への同意を文書にて示していること。

7)原疾患の主治医が、下記の項目①、②、③への同意を文書にて示していること。

  • ①卵巣刺激開始から採卵、ならびに寛解後の凍結卵子を用いた胚移植にいたるまで長期に研究実施機関担当者と密に連絡がとれるようにすること。
  • ②将来凍結卵子を用いた治療を開始する際に、治療の是非の判断をすること。
  • ③原疾患の主治医を交代する場合、責任を持って以後の主治医に上記①-②の履行を引き継ぐこと。

採卵施設への通院

 生理周期にあわせて卵子の採取を行います。通院のスケジュールは患者様の生理周期や施設により異なりますが、 基本的には生理3日目から通院頂き、その後4-5回の通院で必要最少量の投薬により卵巣を刺激して、複数個の卵子を発育させます。 通院では採血、経膣プローブによる内診を行います。生理14日目ごろ、排卵の直前まで卵子を育てた後、超音波で卵巣を確認しながら膣から卵胞に向けて針を刺し、 卵胞液とともに卵子を吸引回収します。成熟した卵子が回収できたか否かは、体外で顕微鏡による観察が必要なため、吸引した卵胞に卵子が存在しない、 または凍結保存できる成熟した卵子が存在しない場合があります。回収された成熟卵子は、液体窒素中に凍結保管します。

費用

 本臨床研究は、研究に参加した民間の不妊治療施設が無償で行っている研究のため、不妊治療施設や患者様への公的な補助金などはありません。 但し、卵子の凍結保存にあたっては、患者様への負担が軽減できるように材料費など実費のみを患者様に負担していただき、採卵を行う不妊治療施設が人件費、 設備費などを負担しております。

予定登録数と研究期間

予定登録数:300例
登録期間:8年(2007年2月~2015年1月)
追跡期間:登録終了後10年
研究代表者:宇津宮隆史